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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)652号 判決

被告人

丹羽正一

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人大野正直、同野村均一の控訴趣意三について

原審公判調書を閲するに、所論の各証拠について原裁判所が檢察官及び被告人又は弁護人に対し証拠の証明力を爭うことができる旨告げたとの記載がないことは所論の通りである。しかしながら公判調書を通じ審理の遂行状況を檢するに、原裁判所が檢察官及び被告人又は弁護人に対し所論の各証拠についてその証明力を爭う機会を与えなかつたものと思料される形跡は毫も存在しない。してみればたとえ原裁判所が右各証拠の証明力を爭うことができる旨を告げなかつたとしても、被告人に対し不利益を与えたものと解することは妥当でない。されば原審手続が刑事訴訟法第三百八條に違反するとなす所論は首肯することができない所論は右の告げなかつたことは刑事訴訟規則第二百四條に違反するというのであるが、それは帰するところ右の理由により判決に影響を及ぼさない訴訟手続の法令違反と解すべきであるから控訴理由として採用し得ないところである。

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